ダイレクトレスポンスマーケティングの主な手法、流れ

ダイレクトレスポンスマーケティング(略してDRM)が生まれたのは1920年代のアメリカで、当時は新聞広告からレスポンスをもらう、といった手法でした。興味を引く広告文と魅力的なオファー(例えば無料で体験版のカセットテープがもらえる、など)で見込み客とつながり、顧客との関係性を作り、商品を販売する、といった流れになります。

ダイレクトレスポンスマーケティングの土台を支えているのがライティングです。いわゆるコピーライティングという技術が必要になってきます。

通称『ピアノコピー』と呼ばれる伝説的な広告をご存じでしょうか? 広告のメインコピーはこうです。

“私がピアノの前に座るとみんなが笑いました
でも、弾き始めると・・!“

これは、自宅でできるピアノレッスンの講座を販売するためのコピーです。おそらくコピーライティングを学んでいない人がコピーを書くと以下のようになるでしょう。

“通学不要!自宅で学べるピアノレッスン
初心者から楽しく弾ける独自メソッド“

この2つの大きな違いはターゲットです。『ピアノコピー』がターゲットにしているのはピアノを弾きたくて教室を調べているような人ではありません。なんとなくピアノが弾けたらいいな、と思っていたり、そもそもピアノが頭の片隅にもないような人までもがターゲットになります。『ピアノコピー』はストーリー仕立ての広告になっており、冴えない男が周りから馬鹿にされていたのに、ピアノを弾き始めた途端に空気が変わり、演奏が終わると拍手喝采、という逆転ストーリーです。このストーリーを読むことで、俺もこんな風にカッコよくピアノが弾けたら・・という気持ちにさせるのです。

それに比べて、もう一方のコピーは、ピアノに興味がある人以外は文章を読もうとはしないでしょう。コピーライティングに関しては別の記事で詳しく書いていこうと思いますが、誰をターゲットにして、どのような反応を取るかを緻密に設計して、媒体を選び、動線を作り、商品を売るのがダイレクトレスポンスマーケティングの流れであり真髄です。

ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)の3要素、集客・教育・販売

DRMを大きく3つに分けると、集客、教育、販売、の3要素になります。まずは集客ですが、ここである程度ターゲットを絞って見込み客を集めます。集める、というのは、ただ見てもらうだけでは不十分で、それ以降の販売につなげるための囲い込みが必要になります。インターネットが無かった頃は、新聞や雑誌などの広告で問い合わせをくれた人に、お試しのカセットテープやテキストなどを郵送で送っていました。ネット全盛の今では、メルマガ登録、もしくはLINE登録によって見込み客をリスト化することで囲い込みをします。

そこからは、教育のターンです。興味を持ってくれた人に対して、メルマガを送ったり、LINEで動画を送ったりして、新しい知識や価値を提供し、より深く興味を持ってもらいます。教育と言うと表現は固いですが、ここでしてもらうのは『お試し』です。スーパーでウインナーを試食してもらったり、動画や音楽のサブスクを一ヶ月無料で体験するのと同じパートになります。つまり、実質、本商品と同じ体験をしてもらう段階です。ここでしっかりと商品の品質だけでなく、商品やサービスがどんな価値観や信念で作られているか、といった部分も共有していくことが重要です。

最後のステップである販売ですが、販売用のLPで申し込みしてもらったり、説明会やセミナーで対面でのクロージングをしたり、方法は様々です。新型コロナウィルスの流行によりオンライン化が進んだことで、最近はオンラインセミナーが主流になってきていますが、オンラインセミナーの自動化も増えています。自動セミナーよりも対面でのセミナーの方が成約率は高いですが、その分時間も労力も取られます。ちなみに、オフラインでの対面のセミナーとオンラインでの対面のセミナーでは、成約率はスピーカーとシナリオに影響されます。原稿さえちゃんとしていれば、新人スタッフが原稿を読み上げるだけでもちゃんと成約してしまうのが、オンラインセミナーの強みでもあります。

構造的に、集客から教育のステップ、教育のステップから販売へと、段階が進むにつれて見込み客は離脱していくため、最終的に商品が売れるのは、リスト化した見込み客に対して3~10%程度です。

そのため想定する売上に対して、どれだけたくさんの集客ができるか、もしくは、どれだけ教育の質を高められるか、もしくは、どれだけ販売単価(または累計販売額)を上げられるのか、という部分が全体の売上に大きく影響してきます。

例えば、マスマーケティングにおいては、集客力は大きくても、教育はかなり限定的なものになります。TVのCMはたった15秒しかなく、商品によっては教育することはほぼ不可能です。「続きはウェブで」というCMが一時期流行りましたが、あれはウェブに誘導した後で教育にあたる部分を提供するためです。

また、ジャパネットたかたなどのTVショッピングは、DRMとマスマーケティングの融合とも言えるものです。TVCMでは伝えきれない情報を長尺の番組として放送するため、『インフォマーシャル』という呼び方もします。見込み客の悩みや困りごと、欲求を掘り下げた後に、商品の魅力を丁寧に説明し、著名人や利用者の声を取り上げ、クロージングでは価格の大幅な値引きだけでなく、番組限定の特典が多数付き、『今すぐお電話を!』と呼びかける流れは、まさにダイレクトレスポンスマーケティングそのものと言っていいでしょう。