ギバーは本当に与え過ぎて疲弊するのか? ギブアンドテイクの考え方

GIVE&TAKE/アダム・グラント著は僕のお気に入りの本です。「与える人」こそ成功する時代、というサブタイトルがついていることから、まだこの本を読んだことがない人にもある程度内容の想像がつくと思います。しかし、本当に与えることが得なのか、という疑問を抱いている人がほとんどではないかと思いますので、本の内容も踏まえた上での僕のギブアンドテイクに関する考え方を書かせていただけたらと思います。

 

GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代

人には、ギバー、テイカー、マッチャ―の3種類いる

まず最初にギバー、テイカー、マッチャ―の定義から。ギバーは見返りを求めずに与える人。テイカーはその逆で、見返りありきで行動する人。マッチャ―はその中間で、ギブとテイクのバランスを取る人です。

感覚的にですが、日本は特にマッチャ―が多いのではないかと思います。マッチャ―が5~6割、テイカーが3~4割、ギバーが1割程度でしょうか。

テイカーの性質とは

テイカーといっても、露骨にテイク!テイク!な人はそういません。誰もそんな人には与えないからです。そのため、テイカーは善人の顔をして近づいてきます。自分に利益をもたらしそうな人には恩を売り、見返りを求めてくるのがテイカーの手口です。そのため、多くのテイカーは上司や目上の人には好かれ、部下には嫌われます。あなたの周りにもそんな上司はきっといるかと思います。

僕が人生で出会ったテイカーで、Oさんという方がいます。絵に描いたようなテイカーで、社長には媚を売り、部下には偉そうな態度を取る人でした。自分の成績が上がるように裏で伝票をいじったり、部下の前では平気で悪いことをする人でした。

テイカーは私利私欲のためには手段を選ばないため、普通に考えればすぐに悪評がたって居場所は無くなりそうですが、意外に昔は大丈夫でした。SNSが流行る前の時代では、活動する『島』さえ変えてしまえば悪い噂も伝わらなかったからです。

マッチャ―の性質とは

マッチャ―は五分五分を好む人です。与えられたら返さなきゃ、という返報性が働くので、多くのビジネスはマッチャ―の心理を利用しているとも言えます。マッチャ―は、返さないと気が済まないので、テイカーには格好のターゲットとなります。マッチャ―をターゲットにすると欲しい見返りが手にできるわけです。また、ギバーにとってもマッチャ―は重要です。マッチャ―がいなければ、ギバーは与えるだけになってしまうからです。

ギバーの性質とは

そして、ギバーは見返りを求めずに与える人です。とはいえ、本当にギバーは一切の見返りを求めていないのでしょうか。これは僕の考えですが、「間接的な」見返りは求めていると言えるでしょう。つまり、先に与えることでペイフォワードの輪が広がり、それが世の中の好循環を生んだら素晴らしいよね、という考え方です。

仮に、世の中のギバーに一切の見返りが無かったとすれば、世の中からギバーはいなくなってしまうかもしれません。とはいえ、なぜ与えるか、の根幹は「自分が正しいと思うことがしたい」からです。そのため真のギバーは、自分の心を裏切らない、という「自尊心を守る」という形でテイクしている、とも考えられるでしょう。

与え過ぎて疲弊するギバー!?

世の中には与え過ぎて疲弊するギバーというのも存在するといいます。与えるばかりで燃え尽きてしまうのだそうです。実際に、「ギバー」で検索しようとすると、「ギバー 燃え尽き」「ギバー 疲れた」といったワードが関連ワードで出てくるほどです。

しかし、ここには矛盾もあります。なぜ疲弊するのか、それは見返りが無いことに対する疲弊ではないでしょうか。と考えると、この人はそもそもギバーではなくマッチャ―なのです。ギバーは与えることに喜びを感じるので、見返りはそもそも不要です。

また、どう与えるかも重要です。お金を貸してほしい、という人に、ホイホイと貸してしまうのは、何を与えているのでしょうか? これはギブしているのではなく、ただ奪われているのです。どうせ返さなくても怒らないだろう、と馬鹿にされているのです。そんな人に本来与えるべきものは、何でしょうか。自分で稼ぐことの大切さや、働き口を探してあげるなどではないでしょうか。その人にとって本当に意味のあるもの、価値のあるものを提供してあげるのがギバーだと思うのです。

あえてリンクは貼りませんが、正しいギブの法則として「5分間の親切」をあげているブログがありました。「5分間の親切」は「GIVI&TAKE」の本の中で紹介されているものですが、そのブログでの解釈がまるで異なっていました。生粋のギバーであるアダム・リフキン氏が行っていた「5分間の親切」ですが、これは「親切するなら5分までにしろ」という話ではありません(ブログではあたかもそのように書かれていました)。リフキン氏は、大勢の集まりの中でも初対面の人には15分ほどの時間を取り相手の悩みなどに傾聴し、人をつないだり解決策の提案などしています。そして、初対面以外の人に対しても5分の時間を取り、話を聞く、というものです。

そもそもギバーの発想として、親切するとしても5分だけ、といった損得勘定で区切るようなことはありません。この発想は典型的なマッチャ―の発想ではないでしょうか。

ギバーとして成功するには

これは僕個人の考えですが、ギバーとして成功するには、やはり自身が向上心を持ち、学び続けた上で、その知識、経験、つながりを共有していくことではないでしょうか。例えば、アルバイトとして同じことを毎日続けている状況では、できる成長や貢献に限界があります。それよりも、自身が仕組を作る側に立って、多くの人を育てる立場に立った方がより大きな貢献ができるはずです。つまり、ギブするためには自分が成長した方が、より大きなギブができるのです。

大きなギブのために、自身が成長しながら周りも助ける事で、成長の好循環が生まれます。成長するために自分より優れた人に素直に頭を下げ教えを乞うことで、人のつながりも広がっていきます。結局のところギバーというのは、ただ与えるのが好きというよりは、良心に素直に従って生きている人なのではないでしょうか。