マーケティングの3M
マーケティングについて、経営学者のピーター・ドラッカーが言った、非常に有名な言葉があります。
『マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。』
これ、聞いたことある人いますか? おそらく、マーケティングをかじった人なら一度は耳にしたことがあるでしょう。これはもちろん、大正解で、世界中のマーケターがここに到達するために、日夜努力しているといっても過言ではないでしょう。
ですが、この言葉を聞いた時の印象として、自動販売機みたいなものを想像しませんか? もちろん、自動販売機でもいんですよ、それで売れるなら。でも実は、このドラッカーの言葉には続きがあります。
『マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。』
マーケティングって、販売を不要にすることだから、要するに客が来るのを待ってればいいんでしょ? とか、ネットショップをオープンして、注文が来るのを待ってればいいんでしょ? って、そうじゃないんです。実はそれだけでは全くもって不十分なんですね。
『顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ』、ここの部分が非常に重要なんです。
つまり、どういうことかというと、
この『顧客』がマーケットです。つまり、誰に売るか、の部分です。そして、製品とサービスが顧客に合っているかどうか、を見込み客はメッセージを通して判断します。正しいマーケットに、正しいメッセージを送ることで、見込み客は商品が欲しい、と思うわけですね。
そして、欲しいと思ったときに、見込み客がどこにも躓くことなくスムーズに購入ができることが大切です。そのため、見込み客にどのように情報を伝えて、そこからどうやってカートに進んでもらって、という全体設計ができていることが重要になってきます。この部分がメディアです。
マーケット:誰に売るか
メッセージ:どう伝えるか
メディア:どんな媒体を使うか
この3つがかみ合えば、ようやくドラッカーが言うところの『販売が不要』の状態になるわけですね。マーケティングが失敗するケースの大半が、コンセプトだけで売れると思っているか、仕組みだけで売れると思っているケースです。コンセプトと仕組みが合わさって、はじめて販売が不要になるのです。
ここに誤解があるせいで、
・ホームページをキレイにしたら客が増えるかも⇒リニューアルしたのに全然集客できない!
・BASEが流行ってるみたいよ⇒BASEなら売れると思ったのに誰も来ない!
といった、メディアだけ用意して撃沈パターンが後を絶ちません・・。
ほとんどの失敗は、『マーケットとメッセージがかみ合っていない』『メッセージとメディアがかみ合っていない』といった3つのMの不調和にあります。
1.マーケット
マーケット、という言葉は人によって違う意味に捉えそうですが、見込み客のことだと思ってください。あなたの商品の見込み客はどんな人でしょうか。
ここでまず、最初の間違いポイントです。ドラッカーは、先ほどの販売を不要に、の言葉とともに、非常に大事なことをもう一つ言っています。
「販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。」
では、販売とマーケティングはどう違うのでしょうか。
マーケティングとは「顧客の創造」をベースの考えとしています。想像ではなく創造です。顧客が何を求めているかを理解し、必要とする価値を提供することによって、その価値提供に対する新たな顧客が創造される。これがマーケティングです。提供される価値に対して顧客が創られた、ということはそこに対して売り込む必要性はゼロです。つまり、これが販売不要の状態です。
それに対して販売とは、その名の通り「売る」ことに焦点が合っています。つまり、商品ありきで、どの市場にどの商品を売るか、という思考になっていきます。そして、買ってください、というのです。
このように、マーケティングと販売は正反対に位置するものです。とはいえ、世の中の商品は、マーケットイン(顧客ニーズに沿って開発される商品)だけでなく、プロダクトアウト(自社の技術や強みに沿って開発された商品)も多くあるわけです。というか、むしろほとんどの商品がプロダクトアウトといってもいいかもしれません。
そのため、多くの場合、商品ありきで、ターゲットはどうしよう? 20代女性かな? といった非常に曖昧な感覚でターゲットを選定してしまうのです。これがどういう災いを招くかというと、メッセージの抽象化、つまり、誰にも刺さらないメッセージになってしまうのです。
POINT
・なんとなくターゲットを決めていませんか?
・自分の思い込みでターゲットの感情を決めていませんか?
・商品に都合の良いターゲットを創造していませんか?
2.メッセージ
ターゲット選定が曖昧だと、メッセージも曖昧になります。
例えば、20代女性に向けたシャンプーがあります。どんなメッセージがよいでしょうか。
これには、まず20代女性が何を考えているか、を知る必要があります。髪質や髪のメンテナンスに関する悩みだけでなく、異性にどう見られたいか、同性にどう見られたいか、どんな香りが流行っているか、どんな髪型が流行っているか。こういった情報の中には、本人が自覚しているものだけでなく、自覚していないものまで含まれます。
情報収集の方法としては、直接のヒアリングがベストです。ざっくり聞くだけでなく、聞きながら深掘りしていく事で、本人が自覚していなかった本当の感情が出てくることがあるのです。
わかりやすい例で行くと、学習塾のスクールIEさんですが、やる気スイッチというCMを見たことがある人も多いと思います。これは実際に学習塾で親御さんからの聞き取りをした際に、「本当は勉強しろ勉強しろ、ってガミガミと言いたくない」という声がありました。そこで、生徒が自発的に勉強をしてくれる「やる気スイッチ」という打ち出し方になったんですね。このCMでは、実際に生徒が自発的に勉強をする流れをストーリーとして明確に伝えていますが、このCMのターゲットは生徒ではなく親です。支払い能力のある親御さんに明確にイメージできるようなストーリー設計をしたことで、大成功した事例となっています。
このように、メッセージというのは、売りたい商品のことを語る以前に、見込み客の感情ありきで語らないことには何も届かないのです。
また、メッセージを伝えるためには、まず見込み客を聞く状態にする必要があります。いわゆる『つかみ』の部分です。バラエティ番組などで、「つかみはOK!」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、まさにそれです。文章や動画においては、冒頭の一文、または数秒のつかみで興味を持たれなければいけません。でないと、一瞬にして見込み客は離れていってしまいます。
そしてもう一点。人は感情で物を買い、それを理屈で正当化する、という原則を忘れないようにしましょう。例えば、機能がほぼ同じでも値段の高いブランド商品を買うのはなぜでしょうか。それはブランドが欲求を刺激するからです。高級ブランドを持っている優越感、自分へのご褒美など、理由は感情です。そのため、文章や動画で伝える場合は、まずは感情、欲求を刺激した後に、購入を正当化するための理由付けとして、どんな機能があって、それにはどんな利点があって、その利点の結果、あなたにはこんな利益があるよ、という説明を書くのです。また、タレントの誰々が使っているとか、専門医のおすすめ、といった要素も同じです。
POINT
・見込み客を理解した上でメッセージを決めていますか?
・見込み客と共通の言葉で語っていますか?
・つかみを意識した構成にできていますか?
・商品の特徴だけを語っていませんか?
・商品を使った後に、見込み客がどう変わるかを明確にしていますか?
3.メディア
メディアは見込み客にメッセージを伝えるための媒体です。例えば、メルマガやLINEの登録をしてもらう場合には、登録を促すページまで誘導するためのメディアが必要です。しかし、誘導するためのメディアが一つしかなければ、そのメディアがうまく機能しなければそれで終わりです。時間をかけて作ったそれ以降の流れを、誰も見ることなく敗北してしまいます。
そうならないために必要なのが、メルマガやLINEの登録ページまで誘導するメディアを複数持つ、ということです。そして、更に言えば、その目的に応じてメディアの運用をすることです。
例えば、Instagramの目的は何でしょうか?フォロワーを増やすことではありませんよね? それは目的ではなく手段です。Instagramの目的は、ホームページやLINEの登録ページなど、あなたのビジネスプランに応じた指定の場所へ導くことです。そして、そのために『全ての』投稿にCTAボタンを設置することです。CTAボタンとは、行動を促すためのボタンです。Instagramの場合は、フィード投稿の最後の画像にプロフィール画面に飛ばすリンクボタンを付けている人がいますが、それがCTAボタンです。キャプションに書く文章にも必ずプロフィール画面に飛ぶメンションを付ける必要があります。
それはやってるけど、反応がいまいち、という場合は、なぜプロフィールに飛ぶ必要があるのか、を明確にイメージさせることができていないことが原因です。つまり、メッセージに問題があります。CTAボタンの付近に書くメッセージを「マイクロコピー」と呼びます。マイクロコピーの重要性は近年ますます上がっています。(実際に、マイクロコピーを変えただけで寄付金が大幅に増えたNPO団体の事例などもあります。)
LINE登録などの入り口まで誘導することだけがメディアの役割ではありません。そこからメルマガやLINE内でのメッセージや動画配布によって教育を進めることもメディアの大きな役割となっています。特にLINEマーケティングの重要性は高まり続けています。その理由は、情報過多です。
インターネット社会になり、あまりにも情報が増えすぎたせいで、人は一日に4,000を超える広告にさらされている、と言われています。それだけの情報の雨あられのせいで、人の集中力は8秒しか持たない、という衝撃のデータもあります。これは、金魚よりも集中力が持たない状態だそうです。。
そんな情報過多の時代においては、メルマガの開封率は着実に落ちています。そもそも捨てアドで特典だけもらう人も多いため、無料の特典だけもらってメルマガを一切読まない人もいるのです。それだけ、人は売り込みを嫌っているのです。その点、LINEは普段の生活の中で毎日何度も開くメディアです。プッシュ通知もあるため、開封率は7~9割にも及びます。これはメルマガの開封率を考えると驚異的な数字です。戦略の軸にLINEを選ぶことは、現代の、特に日本のマーケティングにおいては必須といっても過言ではないでしょう。
ちなみに、アメリカではLINEの普及率は2%にも満たないため、日本のようなLINEマーケティングは存在しません。WhatsApp、Facebookメッセンジャー、Telegram、Skypeなど、人によって使うアプリはバラバラで、メッセージアプリの一強がありません。そのため、アメリカではメルマガを使ったマーケティングが主流です(SMSを使ったマーケティングも一部あるようです)。このあたりは文化に合ったマーケティング手法を選択した方が確実です。わざわざ英語圏のアプリやツールを使うのはメンテナンスも大変なので。
POINT
・集客のためのメディアを何個用意していますか?
・メディアそれぞれの目的を設定していますか?
・メディアの目的は計測できるものですか?
・メディアは目的に沿って運用できていますか?
・メディアの全ての投稿にCTAボタンは設置していますか?
マーケティングの3Mは理解できましたか?次は仕組み化(自動化)のレッスンです。
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